市ヶ谷駅周辺。この界隈には、じつはなじみがなくもない。昔、近くに住んでいたころ、市ヶ谷はお隣さんだった。
それなのに、そのころ私はご飯屋さんめぐりにも、孤独のグルメごっこにも興味がなくて。
ときにはカップルで、ときには友人たちと、おしゃんなキラキラのお店(?)に出入りしたり、はたまた、あるときは突然ファーストフード店に呼び出されたりと、食通としてはあるまじき行動を繰り返していた。
はてさて。市ヶ谷とはどんな街だったろうか。
あのころを振り返ってみても、市ヶ谷のイメージはなにも浮かんでこない。
諸用でJR市ヶ谷駅に降り立ったところ、ここにはほとんど足を踏み入れたことがない、と悟った。
駅周辺の光景も、お店の1軒すら、何ひとつ私の記憶にないのである。
かろうじてあるとすれば、セルバンテスのスペイン料理やさんの偵察に入り口付近まで行き、ガボの映画を観て、図書館に入った思い出だ。
エレベーターでスパニッシュの女性に声をかけられ、主宰する語学レッスンの名刺を渡されたが、これも紛失した。たしか、練馬のほうの家でこじんまりやっていると言っていた。そのときたしか、近くのイタリアンのお店に入ったはずだが、どこだったか、すっかり忘れてしまった。
ともかく、この街に関しては、記憶喪失状態である。
お店探しは、一から足を使ってやらねばならない。
8月半ばの東京である。外の気温は、体感36度。
ここのところ、北関東で命の危険を感じる熱波にさらされている身としては、あの暑いというより痛いという感覚の暑さを思い出せば、東京の夏など屁でもない。
と思い込もうとしたが、やはり暑くないはずもなく。
立っているだけでもつらい。
何が言いたいかというと。
昼に目星を付けておいた店のオープンまで、20分以上ある。
駅の日陰にいればよかったものの、好奇心に駆られてふらふらと歩き始めてしまったから仕方ない。
お目当ての店「ヘルシー館」が開くまで、ほかのお店でも探索してみましょう。ということで、備忘録として写真におさめてきたお店をいくつか載せてみます。
我ながら、なかなかうまそうな蕎麦屋を見つけたもんだ。『蕎麦 成和喜』(なりわき)という蕎麦屋です。
ラ・タベルナ。なんとなく惹かれたイタリアンの店。あとで調べたところ、孤独のグルメにも登場したとか!やはり、なにやら美味しいものが匂うストリートを嗅ぎ分ける能力は、五郎さんと私、近いものを感じて一瞬嬉しくなりました(幻想です^^;;)。
30分程度とはいえ、この猛暑の中を当てもなくぐるぐるしなきゃいけないのは、けっこうつらい。近くのNo.4に入って、お茶でもするか。ということで、とりあえず来ました。
ここは、実は来たことがある。何も覚えていないが、昔たしか、近くでイベントがあったのだ。
それで、昼飯をここで食べて、夜もここで食べた記憶がある。
お昼は前会計制だったので、お金を払ってご飯を食べたのだが、夜は、後で会計する方式で、うっかり、夜ご飯のあと、お金を払うのを忘れて出ようとしたところ、「お客さま〜」と(朗らかに)呼び止められてしまい、とっても恥ずかしかった思い出(うっかりはちべえは若いときからのようです汗)。
久しぶりに来たら、いやはや、ふらっと立ち寄れるカフェではなくなっていた。
平日なのに、えらい混みようで。イートインには15組以上並んでいる。パンだけでも購入したかったが、仕事がらみのちょっとフォーマルな用事が控えているゆえ、いつものリュックを持っていない。パンを買っても、持ち歩ける状態ではないのだ。そもそも、この暑さで、長時間の移動をする私には、無理であった。
仕方ない。ここはあきらめて、ヘルシー館へ向かうとしよう。
途中、コンビニで涼みつつ、お店が開くピッタリの時間に扉の前に立ったのである。
なぜここへずっと私はこなかったのだろう。この近くに住んでいたウン十年前にも、この店はあったはずだ。来なかったのが不思議すぎる。あのころはまだ、孤独のグルメごっこなぞ思いつきもしなかったし、自然な野菜・食材にもそれほどこだわりはなかったのだ。
そして、その頃まだ若者の時分だった私には、やや昭和レトロすぎる佇まいのお店であったのだろう。
ともかく。これをぜひ見ていただきたい。
「当店の献立は、自然農法による穀物や野菜を主とし、調味料も昔ながらの塩、醤油、味噌を用い、うま味はかつお節、椎茸、煮干し等で出しました。」(!!)
との記載から始まっている。この一文だけで、このお店のただならぬ精神が読み取れる。その精神は、そもそも「自然農法」が何であるか、なぜ昔ながらの調味料を使って調理をするのか、ずっと興味を持ち続けて学んできた今だからこそ、骨身にしみて理解ができる。
ところで、これはお店のあるビルの表側に掲げられている。そもそも「舌代」とはなんだろう?と思い、調べてみた(勉強不足ですみません汗)。読み方は、(ぜつだい)で、 「口上のかわりに文書に簡単に書いたもの。「申し上げます」の意で、挨拶や値段表などのはじめに書く語。口上書き。」だそうです。
舌代はこう続く。
「食べる行為が時として健康に逆行している現象が多々ある中で、食物を通して健全な心身を養い、自然を知り”生命”を考えさせてくれます」「加工食品も無添加で」「体にやさしく、安心できる材料と栄養バランスにこだわり」「自然の恵みの力強さとおいしさを味わって・・・」
あぁ、私、毎日この店に通いたい・・・!!
と思ったのでした。
まだ食事前だったが、暑くてもほかのお店の誘惑に負けず、この店にたどり着いてよかった!
早速、メニューを見てみよう。
五穀玄米ごはん、有機使用、残留農薬ゼロ!!の文字に心躍る。
店内には、もっといろいろなメニューがあったが、表のこのメニューを見て、今日は八種の野菜と四種の豆カレーセットに決めていた。外が暑すぎて、ミントティーに惹かれたのである。
長寿村定食にも、ゴーヤチャンプルー定食にも心惹かれたが、第一印象で決めたカレーで気持ちを押し通すことにした。
持ち帰りメニューも充実。こちらのヘルシー館は夜20時まで営業しているので、夕ご飯に持ち帰るのもいいかも。
こちらが店内のメニュー表。表の看板になかったメニューもあり、心は揺れる。
揚げ出し豆腐野菜あんかけ定食!これにすればよかったなぁ〜、でも五穀玄米冷汁セットも美味しそうだし、とろろ茶そばなんかも、さっぱりして良さそうよねぇ〜。
いや、ここは、第一印象のカレーに決めるのが今日の正解にちがいない。そもそも、あとの予定がひかえており、あまり長居もできないので、がっつり定食よりは、カレーで軽めに行くとしよう。
飲み物も、アイスコーヒー350円〜、食事とセットならさらにお安くいただけるということで、ぜひとも注文したいところだったが(梅酒にも強力に惹かれる!)、カレーにはミントティーが付いているので、飲み物の追加も今日は控えておこう。
カレーセット、到着。
あ、ちなみに、こちらのお店はかつお節や煮干しをつかっているお料理があるので、ヴィーガン専門店ではありませんが、このカレーを注文したときに、ヴィーガンかどうかをお聞きしたところ、大丈夫です、とのことでした。
豆カレーには4種類の豆が入っていたのですが、時間を気にしながら食べていた私は、ひよこ豆とキドニービーンズ(たぶん)しかわかりませんでした。
ズッキーニやおくら、ナスやかぼちゃなどの夏野菜が嬉々として五穀玄米に添えられています。ここにカレーをかけながら食べました。
カレーはそれほど辛くなく、マイルドでサラサラしていました。辛いのがちょっと苦手な私には、ありがたい。
アチャールと呼んでいいのかわかりませんが、これも美味しかったです。にんじんと大根の甘酢漬けの上には、(おそらく)みょうがの醤油漬けが載っていました(細かいところ違っていたらごめんなさい)。
このまま食べても美味しいし、カレーと一緒に食べてもいい感じです。
お茶も美味しかったです。ごちそうさまでした!!
店内描写を忘れていましたが、雰囲気は昭和の喫茶店風です。店内はそれほど広くはないです。入り口付近にスイーツのショーケースがありました。
開店の11時半を過ぎると、続々とお客さまが入店され、私のいたときは、全員女性でした。
厨房の前にカウンター席があり、おひとりさまでも入りやすい雰囲気です。
こじゃれた雰囲気のカフェやインスタ映えを期待する方は、あまり来なそうなお店です。ただひたすらに、店主の食へのこだわりと、そしてその食がこれからの体をつくっていくことに思いを馳せ、自分自身の健康と真摯に向き合う、そんなひとときを堪能いたしました。
そしてまた必ず訪れよう。と心に誓ったのであります。
ヘルシー館
TEL: 03-3263-4023
東京都千代田区六番町4 朝日六番町マンション2F
日曜と祝日は定休のようです。土曜は時間短縮かもです。営業時間等、ご自身でご確認をお願いします。
おまけ その1。
別の日。五穀玄米の冷汁セット(真アジ使用)、有精卵の卵焼き付き。
残暑の体を優しくいたわってくれるごはんでした。
おまけ(市ヶ谷から九段下、半蔵門方面へお散歩)。
その後、仕事の用事を済ませた私は、カフェを探して、またしても灼熱の東京を練り歩くのですが、結局入ることができず、表から写真だけ撮りました。これから先、市ヶ谷付近も頻繁に訪れることになりそうなので、今後訪れるための備忘録です。
まずは和菓子の宝来屋さんへ。創業明治元年です。事前に調べたところ2Fがイートインスペースになっているようなので、そちらでお茶でも飲みたかったのですが、満席で入れませんでした涙。
市ヶ谷の駅から歩けます。いつかまた行きたいと思います。
宝来屋さんへ向かう途中、パン屋さんを見つけました。
ちょっと足を伸ばして、半蔵門駅のほうにあるカフェ「TIMI」に行ってみることにしました。ここでランチがしたかったのですが、時間的に行けそうになく、あきらめていたのです。
時計を見ると、まだ14時前なので、間に合うかもしれないなぁと、歩き始めました。
11時半にカレーを食べていますから、2時間も空ければ、軽食が食べたくなりますよね〜ということで。
途中で、歩いたことを後悔する暑さでしたが、どうにかたどりつきました。市ヶ谷駅から寄り道しながらゆっくり歩いて15分かかったでしょうか。けっこうクラクラしていました。
中に入ると、ちょうど14時を過ぎてしまい、ランチはいただけないとのことだったので、あきらめました。
そういえば、近くにもう1軒、行きたかったカフェがあった気がする、ということで、歩いて数分の「イイジカン」へ。
こちらでお目当てのプリンがあったのですが、あいにくこの日はなかったので、こちらもあきらめて帰路につきました(後日行けたので、記事を書けたら書きます。とても好きな店です)。
半蔵門駅から電車に乗ったものの、お腹が「カフェでなにか食べたい」と言い始めていたので、まっすぐ帰ることもできず、途中で電車を降りて、寄り道をすることになるのですが、それはまた別の記事にします。
Bye. 🙂